近年、増加している経験者採用試験についての解説です
経験者採用では新卒向けの採用試験以上に論文が重視されています

今回は経験者採用の課題式論文を解説していきます
職務経験論文については、こちらのページをご覧ください

経験者採用は論文で合否が決まる?

経験者採用と大卒採用の試験における違いは、教養試験と論文試験の割合です
どこの自治体でも、経験者採用では論文を重視しています

ちなみに特別区の経験者採用では、教養試験は足切りにしか使われません
一次試験の合否は、論文の点数のみで決まります

さらに、大卒採用の問題に比べ論文の難易度が高いように思われます

特別区Ⅰ類と経験者採用の違い

特別区の試験で比較してみましょう
令和2年のⅠ類の問題です

 近年、これまで人間が行っていた定型業務の自動化や、AI(人工知能)によるビッグデータの分析等、先端技術を活用した業務効率化の取組が急速に進んでいます。一方、これらの取組を推進する上では、コストや情報セキュリティ、人材面等における課題もあるとされており、自治体職員は、こうした変化に対応していかなければなりません。
 このような状況を踏まえ、先端技術を活用した区民サービスの向上について、特別区の職員としてどのように取り組むべきか、あなたの考えを論じなさい。

(1,000 字以上 1,500 字程度)

特別区Ⅰ類R2

続いて経験者採用の課題式論文です

住民意識の多様化と自治体職員の役割について

(1,200 字以上 1,500 字程度)

特別区経験者R2

どちらも課題が2つあり、好きな方を選ぶという問題です
ここでは1問だけ抜粋しています

一見、Ⅰ類の方が、課題文が長く、難しく感じます
しかし、課題文の中で『自治体を取り巻く環境』と『自治体の課題』を記述してくれているため、導入部分へスムーズに取り掛かることができます

一方、経験者採用では課題文が短く、『自治体を取り巻く環境』と『自治体の課題』を自分で考えなければなりません

問題文を補完する

こういった、短い問題文の場合、まずは自分で問題文を補うことをおススメします

Ⅰ類の問題のように、自治体を取り巻く環境と、自治体の課題を自分で作るわけです
そうすることで、導入部分にスムーズに取り掛かれるほか、論文の中で矛盾が生じるリスクを大幅に減らすことができます

また、受験する自治体に複数の採用区分がある場合は、必ず他の採用区分の問題も見るようにしてください
特別区のように、論文のヒントが他の採用区分に隠れていることがあります

では、実際に上記の例を参考に、問題文の補完をやってみましょう。

自治体を取り巻く環境

住民意識の多様化をヒントにします
何も思い浮かばない方は、自治体の総合計画等を見てください
総合計画は自治体ごとに作成されています
公務員試験ではこの総合計画から作問されることが多いです
公務員試験での総合計画の大切さについては、こちらのページで解説しています

ここでは、私が思い付きで住民意識の多様化をヒントに、『自治体を取り巻く環境』を書いていきます

自治体を取り巻く環境
  • 住民の自治体を見る目が厳しくなっている
  • 住民ニーズが多様化している
  • 地方自治への参加に積極的な住民がいる

私であればこんな感じになります

自治体の課題

次に『自治体の課題』を考えます
もちろん、前述した『自治体を取り巻く環境』を受けての課題です
自治体職員の役割をヒントに考えてみましょう

自治体職員の役割
  • 住民の期待に応える
  • 住民ニーズを把握し、施策へ反映させる
  • 積極的な住民との協働を進め、住民サービスの向上を図る

といったところです

問題文の完成

それでは、問題文を補完しましょう

住民意識の多様化と自治体職員の役割について

 区民の自治体に対するニーズは多様化しており、自治体を見る目は厳しくなっている。また、地方自治に積極的に参加する住民もおり、自治体はより一層協働を推進していくことが求められている。
 このような状況を踏まえ、区民の期待に応え、区民サービスを向上させるための自治体職員の役割について、特別区の職員として、あなたの考えを論じなさい。

となります

ここまでくれば、後は論文基本の型に当てはめて書くだけです
基本の型については、こちらのページで解説しています

課題文の補完について、ここまでやらなくもと思われるかもしれません
ですが、こういった作業を繰り返し行うことで、本番でも正確に問題を把握することができるようになります
そして、自治体を取り巻く環境と課題を踏まえ、特別区の職員として記述することを忘れないでください。